研究概要 |
目的;脈絡膜循環におけるacetyl choline(ACh)による血管弛緩に関与する因子を明らかにするため,モルモットの眼球を用いて脈絡膜細動脈血管径の変化を分析した. 材料と方法:モルモットを安楽死後,眼球を摘出し,その脈絡膜を一塊としてシート状に剥離し,シリコンプレートに伸展固定した.プレートは35℃に保ったKrebs液で持続還流した(4ml/min).脈絡膜細動脈をビデオ顕微鏡下で観察記録し,コンピュータープログラム(DIAMTRAK)で,その血管径の変化を算出した.NO阻害剤としてNω-nitro-L-arginine(nitroarginine),prostacyclin阻害剤としてindomethacin,K+channel抑制薬としてglibenclamide,tetraethacin(TEA),apamin,charybdotoxin(ChTX)を使用し,AChによる血管弛緩をあらかじめnorepinephlin(NE)もしくは高濃度の K+含むKrebs液で収縮した状態で計測した. 結果;NE(10-5M)で前収縮した細動脈では,nitroarginine(10-6M)とindomethacin(10-5M)の両者を同時投与すると,ACh(10-6M)による血管弛緩は24%抑制された.高濃度のK+を含むKrebs液で前収縮させた場合は,AChによる血管弛緩はnitroarginineとindomethacinにより完全に抑制された.またnitroarginineとindomethacinの存在下では,AChによる血管弛緩は,NEで前収縮させた細動脈にたいしてTEA(10-3M),apamin(10-7M)およびChTX(10-7)で抑制がみられたが,glibenclamide(2×10-5M)では抑制されなかった.同時にapaminとChTX投与するとAch(10-6M)による血管弛緩は85%抑制された. 結論;モルモット脈絡膜細動脈では,NOおよびprostacyclinはAChによる血管弛緩の要なメディエータではない.二種類のCa2+活性化K+チャンネルが同時に活性化されることがAChによる血管弛緩の主体であり,その因子として内皮由来過分極因子(EDHF)が有力と考える.
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