研究概要 |
実験1.まず主要なneurotransmitterの一つであるアセチルコリン(ACh)による脈絡膜細胞動脈弛緩に作用する因子について検討した。モルモットの脈絡膜を取り出し、チェンバー内に固定しKrebs液で持続灌流した。ノエルピネフリン(NE)あるいは高濃度K+前収縮させた細動脈がアセチルコリンによって弛緩する際に関与するK+チャネルを同定するために、種々のK+チャネル抑制薬を使用した。NE(10-5M)で前収縮させた細動脈のACh(10-6M)による弛緩はニトロアルギニン(N-Arg,10-4M)とインドメサシン(Ind,10-5M)によって24%抑制された。高濃度K+で前収縮させた細動脈のAChによる弛緩はN-ArgとIndで完全に抑制された。次にN-ArgとIndの存在下でNEで前収縮させた細動脈は、tetraethylammoium(10-3M)、apamin(10-7M)、chrybdotoxin(ChTX,10-7M)によって抑制されたが、Glibenclamide(2'10-5M)では抑制されなかった。ApaminとChTXを同時に作用させると弛緩は85%減少した。以上のことから、モルモット脈絡膜細動脈のAChによる弛緩では、NOとプロスタサイクリンの作用は小さく、大及び小コンダクタンスCa^<2+>感受性K+チャネルが同時に活性化されることが主要な要因であることが明らかとなった。実験2.虚血下における脈絡膜細動脈の弛緩に関与する因子を検討した。実験1と同様にモルモット脈絡膜をチェンバーに固定し、Glucose-free/NaCN(10-3M)の状態で灌流することにより細胞内虚血を作成した。N-Arg,Glb、ChTXでそれぞr47%、62%、24%弛緩が抑制されたが、Indでは抑制されなかった。N-ArgにGlibとChTXを同時に作用させると弛緩は、86%抑制された。高濃度K+では、虚血によりわずか(11%)に弛緩したが、この弛緩はN-Argにより有意に抑制された。このことから、モルモット脈絡膜細動脈で虚血による弛緩では、NOとKATPチャネルの関与が主体であること、NOによる弛緩にはK+チャネルが関与する部分と関与しない部分があることが示された。実験1,2の結果から、脈絡膜弛緩に関する因子はその原因によって異なるが、K+チャネルが重要な役割を果たしていることは間違いないと考えられる。
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