分離度の識別閾値は、ヒト視覚野の側方調節機構(lateral interaction)ともつながるといわれておるため、まず矩形波格子縞の分離非分離連続刺激によって得られる分離度の識別閾値に関する研究とを、視覚誘発電位を用いて行った。また、正弦波格子縞の空間周波数連続変化刺激によって得られる視覚誘発電位の空間周波数閾値に関する研究も平行して行い、比較した。その成果については以下の学会で発表した。国際的には第70回のARVOでの「Evaluation of the vernier acuity and vernier contrast sensitivity by use of the sweep VEP method.」、国内では、第102回日本眼科学会総会での「スイープ視覚誘発電位による副尺視力(vernier acuity)の他覚的評価」、第54回日本弱視斜視学会での「スイープ視覚誘発電位によるvernier acuityとvernierコントラスト感度測定」、第34回日本眼光学学会での「心因性視力障害患者におけるスイープ視覚誘発電位による他覚的視力の検討」などである。まず、正常成人について、スイープ視覚誘発電位による空間周波数閾値および分離度識別閾値を記録する事に成功した。前者は後者よりも閾値が高いという、従来の心理物理学的手法による結果と矛盾しない結果が得られた。分離度識別閾値は通常の空間周波数閾値の示す、視機能と異なるシステムによって示される機能であると考察された。次に、同じくスイープ視覚誘発電位を用いて、正弦波格子縞のコントラスト感度と矩形波格子縞の分離非分離連刺激でのコントラスト感度とを測定することに成功した。各感度曲線は全く異なった曲線を示し、この生理学的、臨床的な意義については現在検討中である。
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