研究概要 |
ヒト水晶体可溶性画分のアスコルビン酸フリーラジカル(AFR)還元酵素は,アスコルビン酸を還元維持する重要な酵素であるが,ジアフォラーゼ活性をも有しており,分子多様性に富んでいることが明らかになりつつある。光化学反応などによって生ずる様々のオキシダントを還元する上で,APR還元酵素の分子多様性は大変意味のあることと考えられる。本研究は,本酵素の分子多様性を蛋白質の分離・分析・同定の方法を用いて解析するために行われた。 ヒト水晶体可溶性画分のAFR還元酵素は,DEAE-セルロースイオン交換カラムクロマトグラフィー後の等電点電気泳動にて多くのアイソフォーム(pI5-7)に分離し,β/γ-クリスタリンと類似した大変高いヘテロジェニティーを示した。さらに,2次元電気泳動で単一蛋白質サブユニットにまで単離することが可能であった。しかし,手術で得られるヒト水晶体の試料が大変少なくなってきており,量的不足のためアミノ酸配列などの分子同定のための分析は成功しなかった。その量的不足を克服するため,ウサギ水晶体可溶性画分より本酵素をセファーデックスG-75ゲル濾過カラムクロマトグラフィー後,2次元電気泳動を行って分離することを試みた。ウサギ水晶体にも本酵素は存在しており,やはりβ/γ-クリスタリンと類似した大変高いヘテロジエニティーを示した。ただし,ヒトの場合に比べ,かなり塩基性の高い位置に多くのアイソフォーム(pI7-8.5)が見られた。2次元電気泳動後,主要なスポットは,単一蛋白質として単離可能であったので,現在そのスポットを単離して,プロテアーゼ分解を行い,キャピラリーHPLCを用いてペプチド分析を試みている。また,アミノ酸配列の分析も行う予定にしている。
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