研究概要 |
申請者はふどう膜炎患者血清中の抗網膜自己抗体を検討していたところ、自己抗原として60kdの網膜熱ショック蛋白質に辿ついた.その網膜蛋白と細菌性HSP60に交差抗原性のある事が確認され,この網膜蛋白は網膜HSP60と考えら,その自己抗原性に関してすでに報告した.ベーチェット病患者を対象に,自己抗原としての網播くHSP60の性質や,それと溶連菌HSP60の関連性について液性免疫応答の立場から原著にまとめ,海外における眼免疫領域の専門誌であるOcularlmmunology and Inflammation誌に投稿し,98年11月に掲載受理された. (論文題名:BEHCET'S DISEASE ANDANTIBODY TITERS TO VARIOUS HEAT-SHOCK PROTEIN60S.)また現在まで各々のHSP60を分子生物学的に解析し,その免疫学的特徴について,平成11年4月に開催される日本眼科学会総会,ならびに5月に米国で開催されるThe Association for resarch of Vision and Ophthalmology総会で発表する.以下現在まで明らかにした点を報告する. 溶連菌streptococcus pyogenesからDNAを抽出したものと牛綱膜cDNA libraryについて,各々のHSP60遺伝子領域について哺乳類や細菌に共通するDNA配列を参考にプライマーを作製し,PCRでDNAを増幅した.増幅された断片を電気泳動で分離し,アミノ酸解析装置でDNA堪基配列を検討した結果から,アミノ酸配列を推定した.その結果をもとに幾つかの合成ペプチドを作製し.リンパ球増殖試験にて患者のリンパ球が反応するエピトープを検索した.さらにLewisラットにペプチドをFreundの完全アジュバント,百日咳菌とともに接種し,ぶとう膜炎が惹起されるか否かについて検討した. 網膜と溶連菌HSP60の内部アミノ酸配列は約200残基解折でき,両者のアミノ酸配列は47%の割合で相同していた.合成ペプチドに対する免疫応答を調べた結果ではリンパ球は網膜と溶連菌HSP60の221番目から235番目の残基LLSEKKISSVQSIVPとLITDKKVSNIQDILPに著しい反応を示した.実験的に軽度のぶとう膜炎がその網膜の合成ペプチドLLSEKKISSVQSIVPを接種した60%のラット(平均13日)にのみ認められた.他のペプチドで炎症は惹起されなかった. ベーチェット病患者のリンパ球が反応するエピトープとして,網膜と溶連菌のHSP60のうち,特に221番目から236番目の残基が自己抗原として重要ではないかと考えた.今後,このエピトープにまつわる免疫学的検索を行うことは,ベーチェット病の発症機序を検討する上で重要と考えた. ベーチェット病ではCD4陽性の細胞陣害T細胞が関与するとの組織学的報告やそれを示唆するサイトカインの動態が見られているが.抗原提示からCD4陽性T細胞活性へ至る過程で重要なclass抗原の関与は,明らかにされていない.自己抗原として網膜HSP60や溶連菌のHSPを用いると,classII抗原の関与や抗原測のペプチド作用が明かにできるので,得られる結果がワクチンなどの治療法の開発に発展していく可能性があると考えている,予算の支給される平成11年度にこの点を明らかにする計画である.
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