1. ラット脈絡膜新生血管発症モデルを用いて、vascular endothelial growth factor(VEGF)およびその受容体であるKDRの発現を検討し、VEGFが脈絡膜新生血管形成にautocrine的またparacrine的に働くことを示した。このモデルにおいてオリゴヌクレオタイド、2重鎖核酸(デコイ型核酸)またLacZ遺伝子をHVJ(hemagglutinating virus of Japan)-リポソーム法で硝子体内に注入し観察した結果、脈絡膜新生血管発生部の細胞にそれぞれが特異的に導入できた。HVJ-リポソーム法で遺伝子導入を行い血管新生に関与するサイトカインを抑制、脈絡膜新生血管の治療が可能であることが示された。 2. 網膜変性モデルであるオルニチン網膜症や虚血再環流モデルでは網膜神経細胞のアポトーシスがおこる。虚血再環流モデルにおいて、basic fibroblast growth factor(bFGF)、Midkineなどの神経栄養因子の発現が上昇した。さらに、虚血再環流モデルではVEGFの発現が一過性に上昇するのみであった。 3. 網膜色素上皮細胞にbFGF遺伝子もしくはアンチセンス遺伝子を導入し、遺伝子導入した細胞をクローン化できた。網膜色素上皮細胞に遺伝子を導入し、目的とする蛋白を強く発現する網膜色素上皮細胞を作成することが可能である。臨床的に脈絡膜新生血管の抜去術後、網膜色素上皮細胞の欠損部ができ、視機能の面で改善のみられないことが多い。遺伝子導入した網膜色素上皮細胞の移植により、より有効な脈絡膜新生血管の治療を行える。さらに網膜変性疾患に対して神経栄養因子を導入した網膜色素上皮細胞の移植を行うことで網膜神経細胞保護を行える。
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