今年は、平均体重が10.2kgの離乳直後の幼ブタ9頭に、自動制御血液ポンプと膜面積0.5m^2の膜型人工肺の回路による、肝静脈-門脈バイパスによる生体内分離肝灌流を施行した。肝灌流量を20ml/min/kgに維持し4時間まで還流し、灌流開始直後、灌流後1時間から4時間まで各時間毎に灌流血と肝組織を採取し、代謝学的変化を生化学的、組織学的に調べた。分離肝灌流中は、回路に20ml/minの流量で灌流液を流したが、灌流液の組成により4群に分類した。灌流液の基本組成としては生理食塩水250ml、蒸留水250ml、メイロン20ml、ヘパリン2.5ml、KCl7.5mlを混合したものを用い、1群:基本組成灌流液(n=1)、2群:1群に人レギュラーインスリン100単位含有(n=2)、3群:基本組成液にグルコース2.5%含有(n=4)、4群:3群に人レギュラーインスリン100単位含有(n=2)とした。 総蛋白とアルブミンは時間の経過とともに徐々に低下したが、グルコース含有群では減少は非含有群と比べて軽度であったが有意差はなく、また、インスリンによる効果は認めなかった。 血糖は、前値からグルコース2.5%含有群では徐々に上昇するが、インスリンを添加しても、血糖下降効果は認めなかった。しかし、グルコース非含有群ではインスリンによる血糖下降効果は他群に比べて大きかった。肝細胞内外でのグルコースのやりとりはインスリンに依存せず、内外の濃度勾配によると言われており、生体から分離した状態の肝灌流中でもグルコース濃度はインスリン非依存性と思われた。 脂質では、総コレステロールが経過時間とともに徐々に減少するのに対し、中性脂肪は、横ばい、あるいはむしろ経過とともに上昇傾向を示した。総コレステロール、中性脂肪ともにインスリンを添加しても影響を与えなかった。 現在は、電顕的に各群の肝細胞の微小形態を調べている。
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