研究概要 |
これまでの研究成果を踏まえ、本年度の研究は神経芽腫群腫瘍におけるアポトーシス発生機構を理解するため、以下の実験を行った。すなわち昨年報告したように、神経芽腫の予後良好群においてはアポトーシス誘発性システインプロテアーゼ、カスパーゼ8aおよびカスパーゼ8bの発現を認めたが、カスパーゼ8発現だけではアポトーシス誘導の説明がつかない症例も当然存在する。そこで今回さらにチトクロームCにより活性化されるカスパーゼ9の発現様式を検討しアポトーシス発現への関与、すなわち患児の予後との関連を見た。【方法】神経芽腫凍結組織18検体を用い、それより蛋白を抽出し,ウエスタンブロット法によりカスパーゼ9の発現を検索した。また,ホルマリン固定パラフィン包埋材料を用い,免疫ペルオキシダーゼ染色により活性型カスパーゼ9の局在を検索した。【結果】1.ウエスタンブロット法では全例に前駆型カスパーゼ9の発現がみられ,うち7例に活性型蛋白であるp37バンドが検出された。免疫染色では,腫瘍内アポトーシス細胞の一部に活性型カスパーゼ9の局在が確認された。【結論】NBには前駆型カスパーゼ9が恒常的に発現し,一部の腫瘍のアポトーシス誘導に関与していると思われた。 以上の結果、1)さらに他のアポトーシス関連遺伝子と神経芽腫との関わりを明らかにすることと、2)個々の腫瘍でのアポトーシス関連遺伝子の発現の差異があるか、および3)臨床情報と遺伝子との関係で予後予測が可能か、を検討することへ研究を展開させる予定である。
|