研究概要 |
前年度の研究によって異所作自己骨髄細胞播種による皮弁延長が得られなかったことより、正常酸素分圧下においては血管新生作用が得られない可能性が示唆された。そこで今年度は血行不良部位のモデルとしてまずラット(FischerF344オス)背部に作成した、液体窒素で冷却した金属棒の圧抵による皮膚全層凍結傷害部(2x2cm)を用い、同系のラット大腿骨・脛骨より採取した骨髄細胞の皮下移植による凍結障害の改善効果について検討を加えた。障害モデルに対し、骨髄細胞皮下注入群とその対照として生理食塩水注入群を設定し、7日後に組織学的検査を行ったが,その結果、病理組織学的にはどちらの群とも新生血管および壊死範囲の縮小化などの所見は得られなかった。また障害部にフリーハンドダーマトームにて真皮中間層レベルの移植床を作成し、同一ラットの腹部よりの全層植皮を行った。その結果においても,骨髄細胞皮下播種群,対照群共に植皮片は壊死に陥り、この方法での血行不良部位の皮膚移植床としての改善効果は得られなかった。 また前年度の研究により、生食に溶解した状態での線維芽細胞増殖因子の事前投与によっては、血管新生を介した皮弁延長効果が得られないことが判明していた。その原因として投与後早期の細胞増殖因子の不活化、および投与部位よりの拡散が考えられたため、それらの条件を改良した方法で皮弁の延長効果が得られるかを検討した。その結果、塩基性線維芽細胞をマトリジェル及びヘパリンと混合して投与することによって、組織学的にマトリジェル内への血管新生が認められ、また対照群に対して皮弁生着範囲の統計学的に有意な増大が認められた。このことより血管新生因子の局所投与による局所血行改善における、因子の担体の選択および血管内皮細胞の増殖の足場となる細胞外マトリクスの選択の重要性が示唆された。
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