研究概要 |
骨代謝のモデルとして、臨床例で経験した先天性片側肥大症患者の骨芽細胞の初代培養系では肥大側と非肥大側の比較において、肥大側の骨芽細胞のDNA合成能が胎児ウシ血清添加、サイトカイン添加の両方において、優位に上昇していた。また、胎児ウシ血清添加した、肥大側の骨芽細胞培地に塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)中和抗体を添加すると、DNA合成能は有意に低下した。このことから、サイトカインとその受容体以降の情報伝達系が選択的に肥大側の骨芽細胞の増殖に関与することが示唆された。更に、下顎骨骨切り症例を骨固定法の比較では、下顎骨の皮質両面を固定する例と、一側の皮質のみの場合の比較で、知覚異常は有意に一側のみの例に小さく、骨固定性には、有意差はなかった。このことから、頭蓋顔面骨代謝においては、骨治癒の際に必ずしも強固な固定が重要ではなく、後のリモデリングを考慮すると、局所の環境を最適化する方がより効果的であると推測された。この事実から、ラットを用いた頭頂骨頭蓋骨欠損部への局所因子、サイトカインのうち、情報伝達系が独自で、かつ骨新生に強く関わるとされている白血病抑制因子(Leukemia Inhibitory Factor,LIF)遺伝子による骨欠損部への新生能を観察した。サイトメガロウィルスプロモーターの下流に、マウスLIF cDNA挿入し、ウシ スプライシングで発現した、プラスミドを含んだ溶液をジェラチン基剤(GELFOAM)に含有させ、骨欠損部に用い観察した。対照群に比較して、3週、5週観察で、有意に骨形成を示した。また、in situ hybridization法によって、骨形成部にLIFのシグナルを認め、骨形成にLIFは関わると示唆された。
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