研究概要 |
本研究のあったて、臨床治験した、先天性片側顔面肥大患者由来の培養骨芽細胞DNA合成能の増加、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)のDNA合成能への関与を知り、サイトカインとその受容体以降の情報伝達系の頭蓋顔面骨由来細胞との関連についての端緒となった。 また、下顎骨骨きり患者の骨固定法の比較検討では、矢状分割後の固定に下顎骨皮質骨の両面を固定した場合、1側の固定の場合で比較すると、固定性に有意差はなかった。また、下歯槽神経の回復は1側固定の方が良好であった。即ち、骨治癒には必ずしも強固な固定は必要でなく、骨のリモデリングを考慮し、環境の最適化が重要である事がわかった。 更に、先天性に顎変形をきたしうる最も治験機会の多い、唇顎口蓋裂患者の上下顎骨きり術後の後戻り、偏位の検討では、平均2.5年の観察期間で、移動方向、移動量、術式、裂型などの因子により術後後戻り、偏位は影響されることが判った。 本研究では、骨局所サイトカインの内、in vivoの持続浸透圧ポンプを用いた骨膜注入法により骨代謝促進作用の報告されている、白血病抑制因子(Leukemia Inhibitory Factor,LIF)に注目した。既に我々は、成長ホルモン産生細胞担体ラット頭蓋骨において、白血病抑制因子(Leukemia Inhibitory Factor,LIF)の発現を認めており、LIFは、そのシグナル伝達が細胞内、核内タンパクのリン酸化により明確に発現機序が規定されている。しかし、実験モデルにより、LIFの骨形成、骨吸収効果が一定していないため、今回、ラット頭蓋骨欠損モデルにゼラチン・スポンジを担体とし、LIF cDNA発現ヴェクターによる骨代謝への効果を検討した。DEXA法で求められた骨密度は観察3週までに有意に上昇し、局所では線維芽細胞、コラーゲン線維は減少し、骨芽様細胞は増加した。LIF免疫組織染色、LIF In situ hybridization法による局所のLIFメッセージはLIFプラスミド添加群で著明に上昇した。頭蓋骨欠損部へのLIFプラスミド遺伝子導入は骨形成に効果的であった。今後、本モデルから、更なる骨欠損モデルにおける転写発現、転写調節因子の解明、同定へと研究を進める必要があると思われた。
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