前年度の実験結果を踏まえ、以下の実験モデル(nは各々10)を作成した。 (A)ラット脛骨神経を大腿中央部で切断し、切断端間に同側の長さ約1cmの腓腹神経を移植する。左側は近位部のみ縫合し、遠位端は筋肉内に埋没、右側では近位部、遠位部ともに縫合する。2ヶ月後に左側のみ開創し、 筋肉内に埋没した遠位端と脛骨神経とを縫合した。 (B)ラット脛骨神経を大腿中央部で切断し、同じ部位で神経縫合を行う。縫合時期を右側では切断直後に行い、 左側では3ヶ月後に遅らせる。 両モデルのラットに対し、実験終了後1ヶ月後に大腿部を開創し、脛骨筋からの誘発電位の有無を確認した。また、神経移植部あるいは縫合部より遠位で脛骨神経を採取し、トルイジンブルー染色を行った。画像解析装置にて有髄神経維線の密度、直径を測定し、左右を比較し、神経再生状態を検討した。 (A)群では、誘発電位の発現率は左側で80%、右側で90%であった。有髄神経の直径の平均値は左右で有意の差は認められなかった。 (B)群では、誘発電位の発現率は右側で100%であったが、左側で10%であった。有髄神経の直径の平均値は、右側は左側の32%であった。 以上の結果から、神経縫合は一期的に行っても二期的に行っても結果に大きな違いはないことが示唆された。また、神経縫合は切断縫合は切断後3ヶ月を経過すると効果があまり期待できないことが明らかとなった。今後は、評価方法を変えて、結論の確証を得てゆく予定である。
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