本研究は以下の4つの大きな実験群に大別される。 1. 動物実験による血管の凍結保存と移植 2. 移植血管の上皮化の観察およびその数値比のためのシステム開発 3. その結果に基づく簡便な凍結保存法の確立 4. 簡便な凍結保存法によって移植された血管の上皮化の数値化とその評価 このうち、平成11年度の実験により明らかとなった内容はいかに要約するとおりである。 1.比較的、口径の大きな血管の凍結保存にはプログラミングフリーザーを利用するような複雑な凍結保存処理は必要なく、十分な凍結保護処理が行われていれば血管の凍結による破壊等は移植の妨げとならない。(同種同系ラット間における動脈・静脈移植結果より、凍結保存後の血管と新鮮血管との移植結果の評価で差異がないことが確認できた。) 2.同種異系ラット間の移植結果より、凍結保存された血管は移植後に免疫抑制剤の使用を行わなくとも短期的には拒絶されることはない。 3.しかし、長期的には次第にその免疫性はドナー由来のものに変化し、これを慢性拒絶反応という新しい概念で捉える事ができる。 4.移植後の血管内膜の再生過程は走査電子顕微鏡によって観察できるものの、その数値化による評価は新しいデータベースシステムの開発が必要であり、時間的・財政的制約の中では困難であるといわざるを得ない。
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