研究概要 |
ラット皮膚線維芽細胞脱分化系の作成に先立ち,ラット皮膚切開創モデルにおいてin vivoの皮膚創傷治癒における真皮線維芽細胞におけるTGF-βの発現を経時的に検討した結果.創作成後1〜2日では創縁に遊走する線維芽細胞のTGF-β各isoformの染色性低下が認められ,肉芽組織形成後より染色性の回復〜増強が認められた。TGE-βのsignal transduction componentであるTak1やSmadsもほぼ同様な変化が認められた。以上から,in vivoにおいては線維芽細胞の遊走に際しTGE-β作用が減弱し,線維形成期に再度発現することが示唆された。Egr-1の免疫染色では明確な結果は得られていない。in vitroでは培養線維芽細胞で遊走状態と線維形成状態を再現する系の開発が必要と考えられ,後者に関しては以前われわれが報告した活性持続型ビタミンCを用いた培養系での検討を進めている。また,ヒト皮膚や瘢痕を用いた検討ではbFGFの発現が亢進している組織のexplant cultureで遊走してくる線維芽細胞はやはりbFGFの発現が亢進しており,組織によっては既に脱分化状態にあることも示唆された.また,RT-PCRでの検討は線維芽細胞の脱分化培養系が確立されていないため,A431M胞を用いてbFGF,EGF刺激後のEgr-1,c-fosの発現を経時的に検討した結果,添加30分以内に両者の発現は一旦低下し,1時間で増強,以後漸減するという二相性の経過を示し,両因子の速やかな反応が見られた。
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