研究概要 |
従来より、分離・培養・同定に依存していた細菌叢の研究にも近年、分子生物学的な手法が取り入れられるようになり、様々な細菌叢についての理解が進んできている。中でも16S rRNAを標的とするPCR、塩基配列解析は簡便で、短期間に多くの情報を取得することができるため、細菌叢研究において、すっかりポピュラーなものとなった感がある。 本年度の研究では、う蝕・非う蝕部位における口腔プラークを試料サンプルとし、16S rRNA遺伝子の増幅、塩基配列決定を行い、プラークを構成する細菌叢の解析を試みた。 結果1)右上第2大臼歯口蓋側縁上プラークの解析では、Streptococcus,Eubacterium,Actinomyces,Neisseria,Haemophilus等の分離頻度の高い細菌に加え、Lactosphaera,Selenomonas,Campylobacterなど計11種の細菌が検出され、従来の培養法を補う意味で意義深い結果となった。2)う蝕進行程度の異なる象牙質3試料の解析より、浅在性のう蝕部位よりの試料からは、Haemophilus,Bifidobacterium,Propionibacterium,Actinomyces,Streptococcus,Prevotella,Selenomonas等、計13種の広範な細菌が検出された一方、象牙質深部に達するう蝕試料から検出される細菌は、Lactobacillusがほとんどであり、う蝕の進行に伴う細菌叢の変化を示唆する非常に興味深い結果が得られた。 次年度以降では、更なる試料サンプルについて分析、検討を行う一方、Helicobacter pyloriをはじめとする特定細菌の検出を試み、口腔細菌叢の成立・変遷の詳細について解析を進める予定である。
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