研究概要 |
唾液腺腫瘍の増殖に関わる細胞周期制御因子の異常と細胞外基質成分、アポトーシス関連タンパクの発現を中心に検討し、以下の結果を得た。 1.腺様嚢胞癌(ACC)において、cyclin D1,cyclin dependent kinase inhibitor(p27,p21,p16),Rb,p53の異常について検討し、ACCではp27の発現低下が腫瘍細胞の増殖促進に強く関わっていることが示された。また、p27タンパクの発現低下が予後判定因子として有用であることも明らかとなった。さらに、培養細胞を用いた検討により、p27タンパクの発現低下は、proteasomeを介した分解の亢進に基づくことが明らかとなり、分解を抑制することによる新しい治療法の可能性が示唆された。 2.唾液腺腫瘍ではbcl-2とbaxが種々の程度に発現されていたが、細胞増殖活性の低い腺房細胞癌では相対的にbcl-2が強く発現され、腫瘍細胞のアポトーシスが抑制されていることが明らかとなった。一方、細胞増殖活性の高い低分化な腫瘍では、逆にbaxが強く発現され、細胞分裂による増殖の促進とアポトーシスによる細胞の消失の両者が同時に起こっている可能性が示唆された。 3.多形性腺腫では、各種glycosaminoglycanが腫瘍細胞によって産生されており、特にheparan sulfateは、細胞外基質には存在せず、より分化の高い腫瘍細胞の核に局在していたことから、細胞増殖の抑制と分化の促進に働いている可能性が示された。Proteoglycanのなかでは、aggrecanとbiglycanが上皮細胞間や特異的な基質成分中に存在し、腫瘍性筋上皮細胞による産生が示唆された。免疫電顕により、各種glycosaminoglycanとaggrecanの腫瘍性筋上皮細胞による産生と分泌が明らかとなった。
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