研究概要 |
扁桃投与法は多量の特異的唾液IgAを誘導できるため,この免疫法を用いてP.gingivalis特異的唾液SIgAが誘導できれば,P.gingivalis以外の口腔常在菌群に直接的な影響を与えずに,P.gingivalis感染による成人性歯周炎を効率良く予防できるかも知れない.そこで,P.gingivalis ATCC3277死菌体を細菌抗原としてウサギの口蓋扁桃へ滴下投与し,また比較のために大腿部へ筋注投与して,以下の結果を得た. 1. 抗P.gingivalis抗体量 扁桃投与群では,唾液では抗P.gingivalis IgA,血漿では抗P.gingivalis IgGが,それぞれ増加していた.筋注投与群では,血漿にのみ抗P.gingivalis IgGが増加していた. 2. 抗P.gingivalis抗体産生細胞数 扁桃投与群の耳下腺では,抗P.gingivalis IgA産生細胞の数が増加していた.筋注投与群の耳下腺では,抗P.gingivalis IgA産生細胞の数の増加は認められなかった. 3. 抗P.gingivalis抗体の特異性 扁桃投与法で誘導された唾液IgAは,投与抗原だけでなく,同種異血清型の菌株ともほぼ同程度に反応したが,P.intermedia,F.nucleatum,およびS.sanguisとはほとんど反応しなかった.また,筋注投与で誘導された血漿IgGは,P.gingivalisだけでなく,P.intermediaやF.nucleatumとも弱く反応した. これらのことから,P.gingivalisの死菌体を口蓋扁桃に滴下すると,特異的抗P.gingivalis IgAを唾液中に誘導できることが示された.したがって,口蓋扁桃投与法は,成人性歯周炎の免疫学的な予防に応用できる可能性が示唆された.
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