本研究は経年変化をすると思われる骨の内部構造と年齢との相関を明らかにすることである。そこで10年度の研究として腰椎に焦点をあて、内部構造の形態的特徴を観察するとともに年齢との関係について検討した。骨資料は、解剖用遺体から摘出した第三腰稚および賜骨の一部と縄文、弥生、江戸の各時代人骨の下顎骨を用いた。観察方法として、研究計画に記載した樹脂包埋、研磨標本の作成、軟X線写真撮影に加え、最近急速に利用されるようになってきた非破壊的観察手段であるマイクロCTを用いた。順序としては、まず非破壊な観察、そして切片標本作成とした。マイクロCTによる結果については、肉眼的観察においても明らかに年齢による骨梁の粗密の違いが認められた。そこで、その違いについて単位体積に占める骨梁密度を数量的にもとめたところ、若年者では高く(密)、高年者では低い(粗)という値が得られた。下顎骨についても同様の観察を行ったところ、腰椎に認められたような年齢との相関が存在しなかった。この結果から、下顎骨が機能に大きく影響を受ける骨であるのに対し、腰椎は機能よりも加齢により変化する傾向にあるということが示唆された。これらの結果に関しては、平成10年度の日本人類学会および日本鑑識科学技術学会において発表した。現在これらの骨を樹脂包埋して切片作成を行っているところである。今後は顕微鏡観察による所見とマイクロCTの所見を照合しながら、年齢推定における有効性の検討を行い、その結果に基づいてより正確性のある年齢推定の判定表を作成する予定である。当初の計画では、計測上のパラメーターを切片標本を用いて行う予定であったがマイクロCTがこの機能を備えているため、この点については再検討し、より適当と思われる方を選択するつもりである。
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