研究概要 |
今年度の研究として,まず従来のX線写真による骨梁体積の観察に比して,マイクロCTによる観察が有効であるか否か,つまりマイクロCTによる計測に信頼性について検討した。その結果,この方法が充分信頼のおけるものであることが証明されたため,本研究のためのデータ収集の方法として採用することを決めた。また,昨年度の結果から,本研究テーマとした口腔領域のうち下顎骨が加齢変化より機能に影響を受けることが明らかになったため,今年度は資料を腰椎に絞り観察を行った。しかしながら,各年代層の腰椎資料を多数収集することが極めて困難であったため,まず一体ずつ撮影を行った。年代は,10歳未満,10歳代,20歳代,30歳代,40歳代,50歳代,60歳代および70歳代である。方法としては,撮影された画像をもとに三次元構築を行い,椎体の任意の部位における単位体積あたりの骨梁体積を求めた。また,マイクロCTでは,任意の平面を取り出すことも可能であり,本研究ではこの平面を椎体中央部の矢状断面および前額断面に設定し,同様に単位面積当たりの骨梁面積を求めた。これは従来の樹脂包埋された骨の切片標本に相当するものであるが,従来の方法では同じ標本を異なる二平面で切ることは不可能であり,マイクロCTによる方法の優れたところである。結果として,近い年代層では全体像の肉眼的観察からその差を確認することは困難であったが,任意体積中の骨梁体積や切断面の骨梁面積では,加齢とともに減少する傾向が認められた。これは,従来のX線写真画像の骨梁観察では不確実であった年齢推定も,この方法では非破壊的により正確な推定が可能であることを示唆するものである。尚,1999年末に獨協医科大学のご協力により各年代の資料を数百個体得ることができた。これらの資料については,今後順次マイクロCTにより撮影を行い最終的な年齢推定に利用できる年齢と骨梁との一次回帰式を算出したいと考えている。
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