研究課題/領域番号 |
10671718
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山本 浩嗣 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (00102591)
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研究分担者 |
宇都宮 忠彦 日本大学, 松戸歯学部, 助手 (50297850)
岡田 裕之 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (70256890)
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キーワード | 動脈硬化症 / 結晶 / シュウ酸カルシウム / リン酸カルシウム / 寄生虫症 / 消化器疾患 / FT-IR / 走査電顕 |
研究概要 |
動脈硬化症は本邦における高齢化社会の到来とともに医学的及び社会的に大きなテーマとなっており、基礎ならびに臨床医学的あるいは分子生物学的技法を用い比較的多彩な研究がなされている。従来本症は主に脂質代謝障害による退行性病変との観点から検索されてきている。しかし今回の研究では本症の終末像に出現する石灰化物や結晶構造物を異所的石灰化の観点からとらえ、口腔及び頭頚部領域における各種疾患の異所的石灰化と比較検討した。 病理解剖検体より得られた大動脈、舌動脈、下歯槽及び歯髄動脈における動脈硬化症の石灰化物及び結晶構造物を病理組織学及び生体鉱物学的に検索し、以下の結果を出し、考察を加えた。病理組織学的に動脈の内膜は線維性に肥厚し、空胞状の脂質沈着やコレステリン裂隙からなる粥腫状ないし塊状、びまん性の石灰沈着が観察された。偏光顕微鏡にて、粥腫内及びその周囲の内膜において光輝性の針状結晶を束ねた高い複屈折性を示す黄色〜青色調の結晶構造物が散在性に認められ、ロゼット状、扇状、松葉状あるいはそれらが互いに連結したような形態を示した。またこれら結晶構造物はvon Kos sa染色で陰性を示す部と、黒褐色に陽性を呈する部が混在していた。顕微FT-IR解析及び走査電顕観察において、これら構造物はリン酸カルシウムあるいはシュウ酸カルシウム結晶と考えられた。本結晶構造物は異種の結晶が混在する可能性を有し、寄生虫感染症や消化器疾患を背景とした成因が推察された。 上顎洞炎症性病変に出現した石灰化物は、炎症性環境下における異栄養性石灰化であり、その形成過程でマクロファージおよびLiesegang現象が関与しているものと推論された。腺様歯原性腫瘍の実質における石灰化は実質細胞の基質分泌により、間質の石灰化は局所の循環障害や変性によるものと考えられる。海綿状血管腫にみられた骨形成は化生によるものと推察された。
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