研究概要 |
1)ミトコンドリアの発達 ラット咬筋のミトコンドリアは生後から発達するが,特に,10日から15日齢でミトコンドリアの横断面積とクリステの数の増大と呼吸鎖酵素の活性の増大が同時に起こってくる。これはほ乳から咀嚼への食性変化時期に一致することから,酸素活性がミトコンドリアのクリステの周囲に存在することを裏づけた。 2)大脳の発達 脳細胞の発達とそこに含まれるミトコンドリアの発達は一致し,呼吸鎖酵素の活性も生後10日から21日齢まで増大してくることが明らかとなった。これはほ乳から咀嚼への食性変化時期に一致することから,咀嚼運動が脳の発達に関与してくる可能性を示唆した。 3)軟食の影響 21日齢から軟食で飼育したラットの咬筋は31日齢まではミトコンドリアの膨大以外は筋線維, ミトコンドリアの形態や酵素活性に大きな差は見られなかったが,60日齢では筋線維が細くなり,ミトコンドリアの数の減少が見られた。同時に呼吸鎖酵素の活性の低下が起こった。この傾向は120日齢まで見られた。このことより,長期にわたる軟食により筋線維,ミトコンドリア,呼吸鎖酵素の活性に影響がでることが明かとなった。これは咬筋が短期的ストレスを受けにくく,長期的なストレスに影響されやすい傾向があることが示唆された。
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