研究概要 |
歯冠部歯髄を露出させて歯髄炎を惹起させた後,露髄面直下の脈管形態の特徴を明らかにするために,血管鋳型標本,超薄切片を作製し,走査型および透過型電子顕微鏡を併用して観察した。 1)露髄4時間後では露髄面直下に急性炎症のために血管透過性亢進が起こり,血管注入用の合成樹脂が血管外に漏出していた。血管外に漏出した合成樹脂はCN付近に無秩序に拡散していた。 2)露髄1日後では4時間後の無秩序に血管外に拡散した合成樹脂とは異なる小球状の漏出像がみられ,それらはCN付近に限局して認められた。 3)露髄7日後,小球状の樹脂が連続した念珠状の鋳型がみられ,その鋳型は相互に吻合して膿瘍周囲を取り巻くように網目を形成していた。血管鋳型標本の表面には不完全ながら静脈弁様の切れ込みがみられた。膿瘍を取り巻く念珠状の血管鋳型は集合して細静脈または主幹静脈に流入していた。 4)露髄面直下の組織を透過型電子顕微鏡で観察すると,一部に基底膜や周皮細胞を欠如するリンパ管様の管腔構造がみられた。 以上のことから本研究においては歯髄にリンパ管の存在は確認できず、これらの脈管は炎症時に微小循環系の吸収システムの一部が変化してリンパ管様の性質を持つものと考えられる。したがってこれらは静脈の一部であると考えられる。
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