平成10〜12年度にわたる3年計画の第2年度の研究として、鼓索神経を舌神経とともに外科的に切断することにより茸状乳頭を脱神経し、脱神経後の茸状乳頭の変性と再分化の過程を組織化学的、透過ならびに走査電顕的に検索すると共に、最終年度(平成12年度)の研究のための予備実験として、準超薄エポン連続切片をイオンエッチング後走査電顕で観察することにより、微細構造レベルでの立体再構築が可能かどうかを検討した。 走査電顕的には、生後1日に脱神経したものでは脱神経後2週までに多くの茸状乳頭が完全糸状化乳頭にまで変化し、その後も再分化の徴候を示さなかった。また光顕的にも透過電顕的にも完全糸状化乳頭を正常糸状乳頭と識別することはできなかった。一方生後8週以降に脱神経したものでは、生後2週までにはほぼすべての茸状乳頭が糸状乳頭に変化し、脱神経3か月後にはその多くが神経の再生に伴って正常な茸状乳頭に再分化していた。 脱神経茸状乳頭の変性および再分化、唾液腺の分化過程を三次元微細構造レベルでより容易に検索するための方法として、エポン切片のイオンエッチングを検討した。その結果、唾液腺、舌乳頭、筋、血管なそいずれの組織においても、数百倍までの観察には印加電圧300Vで約60分間のエッチングが、数千倍以上の観察には印加電圧300Vで約30分間のエッチングが最適であり、本方法が三次元再構築にきわめて有効であることが明らかとなった。
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