1. 象牙芽細胞培養系の確立 本年度は、象牙質のタンパク質であるフォスフォフォリンの発現を研究するための実験系として、象牙芽細胞様細胞の培養をおこなった。細胞を得るための材料としては、ラット切歯の歯髄を用いた。ラットの切歯は連続的に萌出しつづけるので、その歯髄の中に象牙芽細胞に分化する能力がある細胞が存在することが、期待できるからである。歯髄を酵素処理して細胞を分散させ、遊離した細胞をディッシュ内に播いた。培養は通法にしたがって、血清入り培地を用いておこなった。線維芽細胞様の形態を持った細胞が増殖した。これらの細胞は、高いアルカリフォスファターゼ活性を持ち、細胞の中には突起を持つものも見られた。これらの特徴は、象牙芽細胞様細胞の特徴として知られているものである。 2. 象牙質特有のタンパク質の発現 上記の歯髄由来細胞を用いて、象牙質に特有のタンパク質であるフォスフォフォリンと象牙質シアロ・タンパク質(DSP)の発現を検討した。発現の検出は、RT-PCR法によっておこなった。その結果、DSPの発現は見られたが、フォスフォフォリンの発現は認められなかった。このことは、これらの細胞が象牙芽細胞への分化の途上にはあるが、完全に象牙芽細胞へは分化していないことを示している。今後は、培養条件を検討して、より分化した細胞を得ることを目指したい。
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