1.象牙芽細胞様細胞に分化する歯髄細胞培養系の確立 ラット切歯歯髄から、酵素処理によって歯髄細胞を分散させ、通法にしたがって培養した。細胞は結節を形成し、その中に石灰化物が出現した。象牙質特異的タンパク質の遺伝子の発現は、RT-PCR等の方法で検出している。アルカリフォスファターゼ活性は、分化の比較的初期から発現していた。象牙質に特有のタンパク質であるフォスフォフォリン/DSPはアルカリフォスファターゼと同様の変動を示した。このタンバク質の発現は、この細胞が象牙芽細胞様細胞に分化したことを示す。硬組織特有のタンパク質であるBGPは、より後期に相する石灰化期に発現した。 2.ホルモン、石灰化阻害物質の効果 次に、さまざまの活性物質の効果について検討した。骨芽細胞の分化因子として知られているデキサメサゾンは、フォスフォフォリン/DSPの発現を促進した。一方、活性型ビタミンDは、このタンパク質の発現に効果がなかった。石灰化阻害物質であるビスフォスフォネートは、石灰化は予想どうり抑制したが、フォスフォフォリン/DSPの発現は促進した。前者の効果はビスフォスフォネートの物理化学的効果によると考えられる。後者の効果は、おそらく、この物質の、フォスファターゼ活性阻害効果のような細胞生物学的効果によって歯髄細胞の分化が促進されたためであろう。
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