歯根膜感覚情報が脳内でどのように処理され、食物の硬さ、位置や歯触り等の感覚を起こしているか、いかに咀嚼運動系を調節しているかを理解するため、ラットの脳幹三叉神経感覚核群、視床VPM核と大脳皮質第一次体性感覚野の歯牙の機械刺激に反応する歯根膜ニューロンの応答特性を観察した。ラットの実験はペントバルビタール及びクロラロース・ウレタン持続麻酔下で行った。三叉神経感覚核群から視床VPM核に投射する歯根膜ユニットは主感覚核尾側から脊髄路核吻側亜核吻側部の背側部から記録された。その領域の吻側は下顎歯に、尾側は上顎歯に受容野を有した。大多数が同側切歯のみに反応する単歯支配ユニットであった。歯を種々な方向から刺激すると、刺激方向により反応が異なるユニットが観察され、多くの場合唇舌方向又は舌唇方向の刺激に最も良く反応し、逆方向の刺激には反応しなかった。遅順応性ユニットが約半数を占め、他は速順応性ユニットであった。受容野は全て同側性であった。視床VPM核の歯根膜ユニットは核内の吻側2/3の腹内側部に局在し、上顎歯に反応するユニットは背側に、下顎歯に反応するユニットは腹側に分布していた。遅順応性ユニットは30%と減少し、ユニットの約90%は対側に受容野を有していた。大脳皮質体性感覚野の歯根膜ユニットは第一次体性感覚野の最吻側の吻内側部とそれより尾外側部から記録され、吻内側部は下顎切歯刺激に反応する単歯ユニット、尾外側部は上顎切歯の単歯ユニットであった。これらのユニットの大多数は速順応性であり、約70%が対側受容野、約30%が両側受容野であった。ラット上位中枢で得られた受容野の広さ、順応性、投射側はネコの場合と大きく異なっており、これはラットとネコの咀嚼運動の違いを反映しているものと考えられ、今後大脳皮質咀嚼運動野刺激で、この違いを検討する予定である。
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