研究概要 |
細胞内pH測定用の蛍光色素であるBCECFを口腔連鎖球菌に負荷した後、菌体からの漏出を測定した。色素を負荷したS.mutans,S.sanguinis,S.salivarius、S.sobrinus菌懸濁液をグルコースなどのエネルギー源のない条件で35℃、20分間インキュベートしても、色素の漏出は少なかった。グルコース添加条件では、菌体内色素の漏出率は17-85%(平均57%)であり、グルコース添加条件では蛍光色素の漏出が多く、補正が必要であることを明らかにした。 細菌細胞内のpHはエネルギー源のない場合でも細胞外pHよりもかなり高いと考えられてきた。本研究で、負荷したBCECFが菌体外へ排出されない(グルコースを添加しない)条件で、S.mutans,S.sanguinis,S.salivarius菌懸濁液に乳酸を添加し、懸濁液のpHを低下させて、細胞内pHを測定したところ、懸濁液のpHが7.5から5(あるいは4.5)までは、細胞内pHは細胞外pHより低かった。懸濁液のpHが5から4までは、細胞内pHは一定であった。懸濁液のpHが4から3になると、細胞内pHは低下することを明らかにした。すなわちエネルギー源のないときは、口腔連鎖球菌の細胞内pHは懸濁液のpH(7.5から5までは)よりも低く、さらに細胞内では酸性域に緩衝系があることが判明した。この菌体内の酸性域での緩衝系は食事由来の糖から産生された菌細胞内・外の有機酸による菌自身の体内の蛋白、核酸などの不可逆的な失活を防ぐための機構として働くことを示唆している。
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