1。細胞内NADHレベルと酸排出の同時追跡による連鎖球菌細胞内グルコース代謝の検討。 生菌細胞内での糖代謝時の細胞内NADHレベルと細胞外へ排出される酸量を同時・連続的に測定できるシステムを開発し、これを用いて菌細胞懸濁液にグルコースを添加すると、真っ先に糖代謝の下流の反応であるピルビン酸代謝がおこり、次第に上流部の反応速度と下流部の反応速度が等しくなること、糖が消費し尽くされると、まずピルビン酸代謝が停止することを示す結果を得た。 2。連鎖球菌の細胞外pH低下に伴う細胞内pHの変化の検討。 今までは、酸性環境で、エネルギー源が無いときでも微生物の細胞内pHは中性を保つものと考えられてきた。しかし、近年、耐酸性のルーメン細菌では菌体外pHが低下するとそれにつれて細胞内pHも低下することが報告された。歯垢中に多い連鎖球菌は糖を代謝して多量の乳酸などの有機酸を産生する。そこで、連鎖球菌の懸濁液に酸を添加したときの細胞内pHの変化を詳細に検討したところ、懸濁液のpHが7.5から5では、細胞内pHは細胞外pHよりも低かった。懸濁液のpHが5から4までは、細胞内pHはほぼ一定であり、懸濁液pHが4から3になると細胞内pHは低下する事を明らかにした。 3。連鎖球菌のソルビトール代謝の酸素による阻害とソルビトールによるグルコース代謝阻害の検討。 糖アルコールのキシリトール、ソルビトールなどはウ蝕誘発性の低い甘味料である。S.mutansによるソルビトールの代謝は酸素によって強く阻害されるが、その機構については明らかにされていなかった。我々はソルビトールPEP-PTSあるいはソルビトール-6-リン酸脱水素酵素の阻害によって起こることを明らかにした。また、ソルビトールによるグルコース代謝阻害は、ソルビトールを添加しておくと、PEP-PTSによるグルコース取込に必要な中間体が消失するためグルコース代謝が阻害されることを明らかにした。
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