我々の研究室でマウス骨髄細胞から単離、クローン化したストローマ細胞のうちTMS-14は無刺激で破骨細胞形成を支持するが、TMS-12細胞はPGE2などの骨吸収因子の存在下でのみ破骨細胞形成を支持した。このTMS-12細胞に骨吸収抑制物質であるビタミンK2を添加したところ、その培養液はTMS-14の破骨細胞形成を抑制することが明らかとなり、この培養液中の破骨細胞形成阻止因子の単離、同定を試みた。TMS-12細胞の無血清培養を行った後、大量培養(10L)を行い、その培養液を塩析、透析したのち、イオン交換カラム、分子ふるい等の過程を経て、specific activityを1000倍にまで高め、SDS上シングルバンドにまで精製することに成功した。しかし、アミノ酸分析機にかけるまでの量が得られなかったため、この精製品を用いて、その性質を調べた。分子量から、この破骨細胞阻害因子は従来阻害効果が報告されているTGFβ、IFNγ、IL-4、bisphosphonateなどとは異なることが明らかとなった。また、この間に報告されたOCIFとも分子量が一致しないことが明らかとなった。しかも興味深いことに、この因子を単離破骨細胞系に加えたところ、本物質は単に破骨細胞形成を阻害するだけでなく、成熟破骨細胞の形態変化も引き起こすことが明らかとなった。そこで、象牙切片上で骨吸収活性に対する影響を調べたところ、この物質の添加で破骨細胞の骨吸収活性は、90%以上抑制されることが明らかとなった。このことは、本物質が新らしいタイプの破骨細胞形成阻止因子であることを示唆している。
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