本研究は骨芽細胞から産生される破骨細胞形成阻止因子を単離、精製し、その物質の同定を行うとともに、この因子の性質を明らかにすることを目的としている。破骨細胞形成阻止因子を産生するTMS-12細胞のconditioned mediumをTMS-14+脾臓細胞混合培養系に加えることにより、破骨細胞形成が阻止されるかを定量的に調べた。まず、破骨細胞形成抑制因子をconditioned mediumから単離、精製するには血清タンパクが妨害することより、無血清培地の作成を試みたのち、ローラーボトルでTMS-14を培養し、conditioned mediumを120L採取した。塩析、透析、イオン交換カラムなどを行った後、Superdex 200HR10/30を通すことで、分子量200Kと分子量22Kの2種類の破骨細胞形成抑制因子の精製に成功した。本物質のクローニングは現在行っているところである。以下、本精製因子の性質をまとめると、本破骨細胞形成抑制因子は中和抗体の実験より、1)IL-4、IL-10、TNFαとは異なる物質であった、2)本因子は、IL-4などとはことなり、破骨細胞形成の分化過程に作用した、3)本因子は、破骨細胞形成を抑制するばかりでなく、形成された破骨細胞にも作用し、カルシトニン添加時と同様に、破骨細胞の形態変化を引き起こした、4)pit formationを調べたところ、濃度依存的にpit farmationを抑制した、など既知の破骨細胞形成阻止因子とは異なっていることが明らかとなった。 以上のように本因子は従来報告されていた破骨細胞形成阻止因子とは全く異なっていた。さらに、本研究遂行時に明らかになったOsteoprotegerin(OPG)/Osteoclastogenesis inhibitory factor(OCIF)とも異なっており、新しい破骨細胞形成阻止因子であることが明らかとなった。
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