骨芽細胞分化に関するサイトカイン細胞内シグナル伝達の機能的解析

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10671739
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 西村 理行 大阪大学, 歯学部, 助教授 (60294112)
• 研究分担者: 米田 俊之 , 教授 (80142313)
• キーワード: 骨芽細胞 / IL-6シグナリング / JAKキナーゼ / STAT / MAPキナーゼ / BMP

研究概要

1. インターロイキン6(IL-6)の骨芽細胞分化誘導作用
未分化間葉系細胞C3H10T1/2を用いて、IL-6が骨芽細胞への分化を誘導できるか否かを検討した結果、IL-6は、可溶性IL-6レセプター(sIL-6R)存在下において、C3H10T1/2を骨芽細胞誘導できることが明らかとなった。しかしIL-6単独あるいはsIL-6R単独では骨芽細胞への分化は誘導されなかった。
2. 骨芽細胞分化に関わるIL-6細胞内シグナリングの解析
C3H10T1/2の骨芽細胞分化に伴って、IL-6/sIL-6Rが、IL-6の受容体であるgp130をチロシンリン酸化し、IL-6細胞内シグナルを担うJAXキナーゼおよびSTATを活性化することが明らかになった。さらにIL-6/sIL-6Rは、JAK/STATシグナル伝達経路とは異なる重要な細胞内シグナル伝達経路であるMAPキナーゼ経路をも活性化することが判明した。
3. JAK/STATシグナリングの標的遺伝子の探索
最近、骨芽細胞の分化を制御する転写因子としてCbfa-1が同定されている。そこでJAK/STATの標的遺伝子を探索する目的でCbfa-1遺伝子発現への関与を検討した結果、IL-6/sIL6RがCbfa-1の発現を誘導することが確認された。従ってIL-6/sIL6Rは、Cbfa-1の発現を介して、C3H10T1/2の骨芽細胞への分化を誘導していると考えられる。また、JAK/STAT経路とMAPキナーゼ経路の活性化がCbfa-1の発現に重要であると示唆された。
以上の研究結果を踏まえて、今後、IL-6だけでなく、骨形成因子BMPなと他のサイトカインの骨芽細胞分化およびその細胞内シグナルを詳細に検討していく。

研究成果

• [文献書誌] Riko Nishimura: "Combination of interleukin-6 and soluble interieukin-6 Receptors induces Differentiation and Activasion of JAK-STAT and MAP Kinase Pathways in MG-63 Human Osteoblastic cells." J Bone Mineral Research. 13・5. 777-785 (1998)
• [文献書誌] Riko Nishimura: "Smad5 and DPC4 are Key Molecutes in Mediating BMP-2-lnduced Osteoblastic Differentiation of the Plunpotent Mesenchymal Precursor Cell Line C2C12" J Biological Chemistry. 273・4. 1872-1879 (1998)
• [文献書誌] Sakamuri V.Reddy: "lsolation and Characterization of cDNA clone encoding a novel peptide (OSF) that enhances osteoclast formation and bone resorption" J cellular Physiology. 177. 636-645 (1998)
• [文献書誌] Gabriel Mbalavieie: "Cadherin-6 mediates the hererotypic interactions between the hemopoietic osteoclast cell lineage and stromal cells in a munne model of osteoclast differentiation" J Cell Biology. 141・6. 1467-1476 (1998)
• [文献書誌] 西村理行: "SmadファミリーによるTGF-βスーパーファミリーのシグナルの制御" ホルモンと臨床. 47・1. 79-88 (1999)
• [文献書誌] 西村理行: "骨形成因子BMPの作用機構と骨形成" 臨床科学. 34・10. 1378-1386 (1998)