研究概要 |
神経伝達物質による耳下腺管腔膜におけるAQP5増量の機序及びその加齢変化を追究することを目的に実験を行い、本年度は下記のような成果を得た。 1.8週齢、104週齢ラット耳下腺切片をM3-ムスカリン作動薬又はα1-アドレナリン作動薬と反応後細胞分画し、管腔膜AQP5量をウェスタンブロッティングで測定した後、デンシドメーターで解析すると、M3-ムスカリン作動薬では8週齢ラットで3倍、104週齢ラットで2倍の管腔膜AQP5の増量が認められ、α1-アドレナリン作動薬では8週齢,104週齢ラットとも2倍の管腔膜AQP5の増量が認められた。 2.Endoplasmic reticulum membraneおよびMicrosomal membraneを調製し、inositol-3-tris-phosphate(IP3)受容体とリアノジン受容体の老性変化を、各々の抗体を用いたウェスタンブロッティング法で測定したところ、両受容体に老性変化は認められなかった。また、[3H]IP3の結合実験の結果からもこの受容体に老性低下は認められなかった。 3.8週齢、104週齢ラット耳下腺切片をコラゲナーゼとヒアロニデースで処理して遊離細胞を調製し、Fura-2を取り込ませた後、[Ca^<2+>]iの加齢変化を蛍光光度計を用いて測定したところ、老性低下が認められた。 1〜3のことから、M3-ムスカリン作動薬による耳下腺管腔膜におけるAQP5増量の老性低下は、[Ca^<2+>]iのM3-ムスカリン作動薬による上昇の老性低下に起因するものと推察された。そして、[Ca^<2+>]iのM3-ムスカリン作動薬による上昇の老性低下は(IP3)受容体やリアノジン受容体の老性低下のためではなかった。 平成10、11年度の成果とともに総説Japanese Journal of Pharmacology,83,95-101,2000を記した。
|