研究概要 |
3種類のヒトHSP90ファミリータンパク質(HSP90α、βおよび小胞体型HSP90であるGRP94)と真核細胞HSP90の大腸菌ホモローグであるHtpGを大腸菌発現系にて発現精製した。細胞におけるHSP90ファミリータンパク質のストレス誘導性を検討するために、骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞において、反復伸展刺激、熱ショック、亜ヒ酸処理を行った。どの場合もHSP90αの発現上昇が認められたが、特に亜ヒ酸処理で顕著に発現が上昇した。一方、これらの条件ではHSP90βやGRP94は変化しなかった。また非ストレス条件ではHSP90βの発現のほうが量的に優位であった。ラット臓器のHSP90αとβの分布を比較すると、ほとんどの組織でHSP90βが普遍的にかつ優位に発現していた。しかし熱ショックによってダメージを受けやすい細胞(神経細胞と精子)を含む脳と精巣においてHSP90αの発現が亢進していた。以上の結果から、HSP90αの組織特異的、ストレス誘導性の発現と、HSP90βの普遍的、恒常的発現が明らかとなった。全身性エリトマトーデス患者のもつ抗HSP90抗体の性質について検討し、HSP90βアイソフォームに選択的に結合する抗体を保持することを示した。 都臨床研の矢原らとの共同研究により、HSP90ダイマーは直列に並んだ4構造からなると判明した(Maruya et al.,in press)。私たちの以前の報告を考え合わせ、電顕観察でのHSP90ダイマーの4構造(以下の[ ]_<1〜4>を示す)は、一次構造上の3ドメイン(A1〜C1、A2〜C2:ダイマーの各ペプチドを1、2で示す)が[A1]_1-[B1/C2]_2-[C1/B2]_3-[A2]_4と並んで形成されていると結論した。
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