研究概要 |
テトラヒドロビオプテリン(BH4)は細胞の内外においてモノアミン性情報伝達系と一酸化窒素(NO)性情報伝達系の機能を調節する作用を持つ.BH4膜輸送は細胞内外のBH4濃度を左右する最も重要な要因である.これら2つの情報伝達系に対するBH4膜輸送と細胞外BH4の作用について検討し,以下のことを明らかにした. 1.PC12細胞において,BH4生合成を阻害し内在性BH4レベルを低下させた状態では細胞外BH4はNO産生を促進させる.しかし,内在性BH4が通常のレベルで存在するときは細胞外BH4の取り込みは少なく,細胞のNO産生には有意な影響は観察されない. 2.PC12細胞の一酸化窒素合成酵素の発現に対する細胞外BH4の影響は24時間程度の培養では検出されない. 3.NO依存性の生理的現象に対する細胞外BH4の作用についてはまだ明確ではない.BH4はNO生合成を促進するが,産生されたNOの消去にも促進的に作用するため,実験条件の違いが結果に大きな影響を及ぼすためと考えられる. 4.PC12細胞によるドーパミン(DA)生合成,および細胞からのDA開口放出に対する作用についても,NO合成の場合と同様に,内在性のBH4レベルを低下させておいた場合に細胞外BH4の作用が明らかに検出されるようになる. これらの結果から,脳におけるDA開口放出誘導などに見られるように,細胞外BH4が有効な作用を示すのは,生体内で細胞外BH4レベルが低く保たれていることが重要であると推測される.このため,BH4生合成能を持つ細胞による高親和性BH4取り込み機構の存在と,細胞外液中でのBH4代謝機構について検討を行っている.
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