我々は、この2年間の破骨細胞におけるNa^+/Ca^<2+>交換体(NCX)の役割及びNCX阻害薬の影響に関する研究の総括とまとめを行った。今回Na^+/Ca^<2+>交換体(NCX)と骨吸収との関与を明らかにする目的で新規に開発されたCa^<2+>イオン流入モードNXC1を選択的に阻害するNCX阻害薬KB-R7943を用い、破骨細胞に対する作用を検索した。KB-R7943はNa^+依存性の細胞内Caイオンの取り込み試験により破骨細胞においても、その効果を確認した。Colony-Stimulating Factor-1(CSF-1)刺激によりCSF-1受容体、PLCγのチロシンリン酸化とIP3産生亢進に伴い、破骨細胞の[Ca^<2+>]iは一過性に上昇した。この上昇はThapsigarginより阻害されたので細胞内ストアーからのCa^+遊離による。またその後に誘導される周期的な[Ca^<2+>]i上昇も核及び膜に観察されたが、これはKB-R7943の添加あるいはBAPTA添加により完全に抑制されることからCa^<2+>イオン流入モードのNCX1の活性化を解するものと推測された。破骨細胞形成誘導系に対するKB-R7943もしくはNCX1antisensoligodeoxynucleotideは濃度依存的に破骨細胞形成、アクチンリング形成及びpit形成を有意に抑制した。特に細胞外からのCa^<2+>流入モードを阻害する濃度(10^<-5>M)では顕著であった。Western blot及び免疫抗体染色により破骨細胞及びその前駆細胞はNCX1を発現していた。また新規NCX1阻害薬KB-R7943が骨粗鬆症治療薬となり、今までその役割が全くわかっていなかったNCX1の流入モードが破骨細胞の形成から分化・骨吸収までに重要な役割がある可能性が示唆された。
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