研究概要 |
ムスカリン性作動薬のベタネコールと神経伝達物質候補のサブスタンスPによるラット顎下腺の唾液分泌に対する神経伝達調節物質のニューロペプチドYの役割について検討した。実験は、いずれも24時間絶食した10週齢のSD系雄性ラットを用いた。1.ニューロペプチドY:ニューロペプチドYの1、3 および10μg/kgの1回静脈内投与は、いずれも顎下腺からの唾液分泌を惹起しなかった。2.ベタネコールとニューロペプチドY:ベタネコール(100μg/kg)の1回静脈内投与による唾液分泌速度は、0-1分で最も高く、その後著しく減少し2-3分で消失した。ニューロペプチドY(1,3,10μg/kg)の1回静脈内投与による前処理は、ベタネコールの唾液分泌動態に影響せず、蛋白分泌を高めた。ニューロペプチドYとベタネコールの併用投与による分泌唾液の糖蛋白泳動像は、ベタネコールの単独投与に類似し、腺房の粘液細胞に由来するムチンが大部分であった。3.サブスタンスPとニューロペプチドY:サブスタンスP(3μg/kg)の1回静脈内投与による唾液分泌速度は、0ー1分で最も高く、その後減少し4-6分で消失した。ニューロペプチドY(1,3,10μg/kg)の1回静脈内投与による前処理は、サブスタンスPの唾液分泌動態に影響せず、蛋白分泌を高めた。ニューロペプチドYとベタネコールの併用投与による分泌唾液の糖蛋白泳動像は、サブスタンスPの単独投与に類似し、腺房の粘膜細胞に由来するムチンが大部分であった。 この実験の展開として、ベタネコールおよびサブスタンスPによる蛋白分泌に対するニューロペプチドのY_1とY_2受容体の関与について、それぞれの受容体に選択性の高い作動薬を用いて検索する。
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