研究概要 |
本研究の目的は,活性酸素種によるα-受容体を介した血管平滑筋収縮反応および内皮細胞依存性弛緩反応の抑制効果に,propofolがどのような影響をおよぼすかを明らかにすることにある.平成10年度の研究成果を踏まえ,平成11年度に行った研究概要と成果を以下に示す. 麻酔下に放血致死させた雄性白色家兎(体重1.5〜1.8kg)より腸間膜動脈を摘出し,リング標本(O.D.1.5〜2.0mm)を作製した。標本を10ml容のorgan bath中に0.5gの負荷をかけて懸垂し,60分間安定させた後実験を開始した。血管反応の観察は4個の標本についてパラレルに行った。norepinephrine(10^<-8>〜10^<-3>M),phenylephrine(10^<-8>〜10^<-3>M),UK14304(10^<-7>〜10^<-4>M)を累積的に投与することによって得られる用量反応曲線,および経壁的電気刺激(transmural stimulation;ES)による刺激頻度依存性収縮におよぼす過酸化水素(H_2O_2;150μM)あるいは硫化第2鉄(FeSO_4,100μM)各々単独5分間処置による反応抑制と,propofol(1,10μM)による影響を検討した.ESによる実験では,8x8mmの白金板を標本の両側より平行に設置し,電気刺激装置(日本光電社製:SEN-3301)を用い,直接平滑筋細胞を刺激しないとされている9V,0.2msec.durationの矩形派で,1〜32Hzの頻度で刺激を行った.また,indomethacin(5μM)存在下で,NEによって前収縮させたリング標本にacetylcholine(ACh)1μMを作用さることによって生じる内皮細胞依存性弛緩反応に対するH_2O_2(150μM)あるいは硫化第2鉄(FeSO_4,100μM)各々5分間処置による抑制効果と,これに対するprofolの影響を検討した. その結果, (1)H_2O_2はα-受容体を介する血管平滑筋収縮機構を非特異的に抑制したが,FeSO_4による抑制効果は認められなかった. (2)H_2O_2はprostanoid非依存性の内皮細胞依存性弛緩反応を抑制したが,FeSO_4はこれを抑制しなかった. (3)propofol(10μM)は,H_2O_2による血管平滑筋反応の減弱を抑制した. 以上の結果からpropofolはH_2O_2に対して高い消去活性を持つことが示唆された.
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