研究概要 |
(1)研究の背景 骨の形成と吸収を制御する因子として、サイトカインの役割は、広く認識されているが、最近このサイトカインの情報を伝達する物質として一酸化窒素(NO)の細胞内での挙動が着目されつつある。NOはNO synthase(NOS)により生成されるが、その活性発現には補酵素としてテトラヒドロビオプテリン(BH4)を要求する。近年,このBH4に培養細胞に対する細胞増殖作用、anti-oxidant作用、アポトーシスを惹起するNOの生合成酵素NOSの補酵素としての働きなど新たな生理作用が着目されつつある。(2)研究目的 1)サイトカインによるマウス骨芽細胞MC3T3-E1 cellsの増殖抑制がアポトーシスによるものか 2)その際遺伝子レベルで誘導された誘導型NOSおよびGTPCH-Iの最終酵素産物NOとBH4がおのおの細胞内で産生されるか 3)BH4の果たす役割、特に抗アポトーシス作用があるか 4)骨芽細胞のアポトーシスが病態に関わる可能性について検討を行った。(3)結果 1)炎症性サイトカイン(IL-1β,TNF-α,IFN-γ)で処理することは、強い細胞増殖抑制および細胞死を示し、同時にNOを産生することを確認した。LDH assay,細胞周期解析、ELISAにて、この細胞死がアポトーシスを介したものと確認した。2)サイトカイン処理により最終酵素産物BH4が細胞内で産生された。3)BH4がMC3T3-E1に対し濃度依存的な細胞増殖性を示した。4)骨芽細胞のサイトカインによるアポトーシスがBH4により濃度依存的に阻止できることを確認した。4)Actinobacillus actinomycetemcomitans由来莢膜多糖抗原がアポトーシスを介した細胞増殖抑制を示すことを明らかにし、骨芽細胞のアポトーシスが病態(特に歯同病)に関わる可能性を明示した(Journal of Dental Research,1999,in press)。現在、実験結果を踏まえての総括的な考察及び付加的実験を行っている。結果の一部はJADR大会にて発表を行い、また現在論文投稿中である。
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