タキキニンの活性部位を同定し、その成績を基に新しい催唾ペプチドを開発する事を目的に本実験に着手した。そこで天然に存在するタキキニンのうち最大の催唾作用を示すフィサレミンのアミノ酸配列を参考に活性部位の同定を行った。すなわち、フィサレミンのC-末ヘプタペプチドのアミノ酸をそれぞれ20個のアミノ酸とひとつずつ置換した126個のC-末のヘプタペプチドをmultipin法で合成し、催唾作用を検索した。その結果、1.C-末のアミド基は活性発現に必須であること。2.天然のタキキニンのC-末ペンタペプチドの各アミノ酸はほとんどが最適であり、1、2のアミノ酸のみが同じ能力をもって代替可能であること。3.5および6位のアミノ酸はとても大切で、この部位が活性調節部位であること。4.天然のタキキニンのN-末1-4位の各アミノ酸は、C-末のペンタペプチドほど、厳しく保存される必要がなくすべての置換体が催唾作用を示した。5.天然のタキキニンのN-末1および2位のアミノ酸、特に1位のものは生物活性を抑制するために存在していること。6.タキキニンの6位のアミノ酸を最適に近いものに置換すると新しい催唾剤が開発できること。以上述べてきたように、これらの成績を基に新しい催唾剤を開発できるだけでなく、さらにペプチド性レセプターとの結合部位の研究、新しい薬剤の開発あるいはサブスタンスPなどの阻害剤の開発も可能であると推測できた。しかし、ヒトへの応用にはさらなる研究が必要である。
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