1.ヒト唾液高プロリン蛋白質P-Bをコードする遺伝子をPCRクローニングし、PBIIと命名した。塩基配列をDDBJに登録しアクセッション番号AB031740を得た。PBIIはATリッチ遺伝子であり3個のエキソンを含む。また研究代表者が以前クローニングしたP-B関連遺伝子PBIと全領域にわたって高いホモロジーを有する。エキソン2は両遺伝子で完全に一致する。分子中央部すなわちイントロン2でのホモロジーはやや低い。PBIIのエキソン3はPBIのものより長いがPBIIの遺伝子産物P-BはPBIの仮想遺伝子産物P-BIより短い。 これはPBIに於いて終止コドンの位置がPBIIの場合より3'側へシフトしている為である。PBIとPBIIは同じ遺伝子ファミリーに属していると考えられるが、PBIIの転写産物(P-BmRNA)のみがヒト顎下腺に存在する。 2.PBIIはStanford G3 Radiation Hybrid PanelとPBII由来プライマーを用いるPCRによって、第4染色体長腕にマップされた。PBII遺伝子の近傍には唾液蛋白質であるヒスタチンやスタセリン、涙の高プロリン蛋白質、同族遺伝子であるPBIがマップされている。 3.ウシ顎下腺、歯胚、歯髄のmRNA中にP-BmRNAが存在することをPCRによって確認した。ウシ幼若エナメル質中にP-BとN末57残基が同一な蛋白質の存在が報告されているが、この蛋白質は歯胚に於いて合成されていると考えられる。なお、ウシ幼若エナメル質中に多量に存在する血清アルブミンのmRNAは歯胚clDNAをテンプレートとするPCRでほとんど増幅されなかった。P-Bの合成についてさらに多くの臓器を調べることによって、その生理的役割の予測が可能になることが期待出来る。
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