研究課題/領域番号 |
10671768
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
弘田 克彦 徳島大学, 歯学部, 教授 (60199130)
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研究分担者 |
根本 謙 徳島大学, 歯学部, 助手 (10218274)
小野 恒子 徳島大学, 歯学部, 助教授 (40035514)
三宅 洋一郎 徳島大学, 歯学部, 教授 (80136093)
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キーワード | レンサ球菌 / S.intermedius / 肝疾患 / CD15s / Lewisy |
研究概要 |
ヒト口腔内膿瘍の主たる起因菌であるStreptococcus intermediusが、(1)なぜ遠隔臓器である肝臓の肝炎症巣から高頻度に分離されるのか、(2)本菌莢膜に存在するヒト類似抗原がどのような機序で肝疾患に関わっているのか、の2点に焦点を絞って検討した。その結果、本菌莢膜に存在するCD15s類似抗原が、Helicobacter pyloriやSchitosoma mansoniに存在するCD15抗原と同様に、免疫監視機構からの逃避能を有することが考えられた。またCD15s類似抗原により、肝臓へ本菌が血行性やリンパ行性にtranslocationすることが考えられた。これは癌細胞の遠隔転移機構として知られる、CD15s-セレクチン細胞接着分子系を介する機構のと類似する。動物実験結果では、肝炎症巣ではMHCクラスII分子の異所性発現や、アポトーシス異常が認められた。CD15s抗原は既に自己免疫性肝疾患の標的抗原である可能性が報告されているが、肝炎症巣では細胞性免疫が関与し、特にCD8陽性T細胞が肝臓に多数浸潤していた。本T細胞はCD15s結合・認識能力の高い少数のCD4陽性T細胞に調節され、CD15sを発現している肝細胞を傷害する可能性が示唆された。またTh1、Th2のバランス異常も認められた。 従って本菌莢膜に存在するCD15s類似抗原は、ホスト側の遺伝的背景もあるが、自己免疫性肝疾患の発症に関与する因子の一つとなり得ることが示唆された。本菌にはモノクローン抗体との反応性によりLewis y抗原も存在するが、Lewis y抗原は原発性胆汁性肝硬変(PBC)の病原因子であるとも報告されている。今後更にLewis y抗原が惹起する肝臓での免疫組織化学的反応の詳細も明らかにする必要がある。
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