根尖性歯周炎は病巣への白血球浸潤と根尖部周囲の歯槽骨吸収を伴う疾患であるが発症の詳しいメカニズムは明らかにされていない。今年度は、根尖性歯周炎の患者から試料を採取し作成した組織標本で、知覚神経が炎症の成立に関わるかどうかを調べるために知覚神経ペプチドであるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、P物質(SP)、肥満細胞、腫瘍壊死因子に対する各抗体を用いて免疫組織化学法で検索した。病巣組織には多数の炎症性細胞が浸潤しているのに混じり少数の肥満細胞が小血管の近くに認められた。CGRP陽性神経線維とSP陽性神経線維は多数の炎症性細胞が浸潤している部位の小血管付近に局在しているのが認められた。陽性神経線維には神経終末も認められた。さらに二重染色を行ない小血管付近に局在するSP陽性神経線維と肥満細胞が近接して認められた。腫瘍壊死因子陽性細胞は肥満細胞であった。以上のことから、根尖性歯周炎において知覚神経由来の神経ペプチドであるSPと肥満細胞の機能的関連による神経原性炎症が示唆された。
|