研究概要 |
本計画の目的は,口腔内に装着した金属の一部が溶出し,扁桃で取り込まれ,金属アレルギーを誘導するかを実験動物を使い検討することである. 扁桃投与による金属アレルギーの誘導に適した金属の種類と金属イオンの濃度を決めるために,最初にマウスの細胞培養での破骨細胞の形成系を使い調べた.この結果,ニッケル,銅,チタン,パラジウム,銀の順に強く破骨細胞の形成は阻害された.この結果から,塩化ニッケルを,約50%の破骨細胞の形成を阻害する2μMの100倍の濃度の200μMで扁桃投与に供した.投与抗原として,免疫の有無を知るために牛アルブミン(BSA)を単独でまたは塩化ニッケルと一緒に用いた.さらに,一部ノウサギで粘膜免疫アジュバンドのコレラ毒素B鎖も加えた.これらの抗原をウサギの口蓋扁桃に毎週1解6週間投与した.投与の結果,いずれの場合でも金属アレルギー反応を示す皮内反応は検出されなかった.一方で,塩化ニッケルは,単独投与では血清抗体を誘導できないBSAに対して抗体を誘導させることが示された.ニッケルによる抗体誘導効果は,塩化ニッケルとBSAを混ぜる時期により抗体の誘導に大きく影響した.すなわち,投与直前に混合して扁桃投与した場合,BSA抗体が誘導されたが,1日前に混合しても抗体の誘導は全く認められなかった. 以上,本研究において,扁桃に投与してもニッケルによるアレルギーの誘導は認めれなかった.しかし,ニッケルイオンは抗体誘導効果もち,ニッケルイオンが単独で口蓋扁桃から取り込まれた場合,共存して扁桃内に取り込まれた蛋白質に対する抗体が誘導される可能性があることが示唆された.
|