研究課題/領域番号 |
10671779
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
大塚 吉兵衛 日本大学, 歯学部, 教授 (50059995)
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研究分担者 |
武市 収 日本大学, 歯学部, 助手 (10277460)
大島 光宏 日本大学, 歯学部, 助手 (30194145)
鶴町 保 日本大学, 歯学部, 講師 (60139201)
前野 正夫 日本大学, 歯学部, 助教授 (60147618)
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キーワード | 歯根襄胞由来細胞 / プロスタノイド / サイトカイン |
研究概要 |
歯根嚢胞由来細胞が、嚢胞の増大にどのように関与するのかを調べる目的で、プロスタノイドのうち、プロスタグランジン E_2(PGE_2)およびトロンボキサンA_2(TXA_2)がこの細胞に及ぼす影響を調べた。外科的に摘出された、3例の歯根嚢胞から得た3群の歯根嚢胞由来細胞を用いて、10^<-8>〜10^<-6> MのPGE_2またはTXA_2がこれらの細胞のDNA合成能、コラゲナーゼ産生、IL-6、LIF、IL-8およびMCP-1産生に及ぼす影響を調べた。DNA合成能は^3H-Thymidineの取り込みを、コラゲナーゼ産生はその活性測定を、サイトカイン・ケモカイン産生はELISA法を行って評価した。その結果、PGE_2はDNA合成能を概ね低下させるが、TXA_2は濃度によってはDNA合成能を促進させることが判明した。コラゲナーゼ産生については両プロスタノイドとも濃度依存的にこれを抑制することが明らかとなった。サイトカインであるIL-6産生に関しては両プロスタノイドとも濃度依存的に促進させたが、TXA_2の方がPGE_2と比べて2〜5倍の産生促進効果を示した。LIFも同様にプロスタノイドの添加によってその産生は促進されたが、PGE_2の効果が顕著に大きい1例がみられた。ケモカインであるIL-8産生では、両プロスタノイドの添加によって濃度依存的にその産生が促進されたが、PGE_2の方がより効果的であった。MCP-1産生についてはどちらの因子を添加した場合でもその産生促進効果は大きく、10^<-6> Mの添加でコントロールの50倍程度の産生促進がみられた。RT-PCR法にてそれぞれのmRNA発現を調べた結果、いずれのサイトカイン・ケモカインの発現もプロスタノイドの添加により上昇していた。以上の結果をまとめると、PGE_2およびTXA_2DNA合成能をそれぞれ抑制または促進し、コラゲナーゼ産生を抑制、またサイトカイン産生に関しては促進させることが判明した。IL-6部よびLIFは骨芽細胞の分化抑制因子として、またIL-8は好中球の、MCP-1は破骨細胞の前駆体である単球の走化性因子であることを考え併せると、今回用いたプロスタノイドの刺激により、歯根嚢胞由来細胞は周囲の骨組織の代謝に影響を与えうるサイトカイン・ケモカイン産生を促進したと考えられる。なお本研究の成果は、第16回ヨーロッパ結合組織学会(1998年8月,ウプサラ,スウェーデン)にて発表した。
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