成人性歯周炎の原因菌P.gingivalisは強い赤血球凝集能を持つことから、歯周組織への付着に本菌の赤血球凝集因子が密接に関係すると示唆されてきた。また、P.gingivalisは、その増殖に強いhemin要求性を示す細菌であり、赤血球凝集因子が赤血球付着能を介して、鉄輸送系にも寄与すると考えられることから赤血球凝集活性ドメインをブロックすることは、P.gingivalisの歯周組織への定着及び増殖を阻止し、歯周病の発症・進展を抑制できると考えられる。 本年度は、P.gingivalisの赤血球凝集因子の機能部位を分子レベルで解析することを中心に次の結果を得た。 (1)モノクローナル抗体が認識するP.gingivalis381のl30kDa分子をコードする遺伝子クローンのシークエンス結果から、本分子は、P.gingivalis W12株のプロテアーゼPrtPの赤血球凝集ドメインと高いホモロージーを示すことが判明し、同プロテアーゼの381型と示唆された。(2)deletion mutantを用いて、抗体認識部位の局在を検討した結果、130kDa分子中には抗体認識部位が2ヵ所存在していた。両部位の共通アミノ酸配列PVQNLT配列と、Phage Display Peptide Library Kit(7 type)を用いた抗体認識ペプチド(7アミノ酸残基の2X10^9独立ペプチド配列を含む)とは類似性が認めらた。(3)PVQNLT配列は、多くの赤血球凝集活性をもつプロテアーゼに必ず存在することが検索の結果判明した。(4)PVQNLTを含む12残基の合成ペプチドが赤血球凝集活性を抑制した。 以上の結果から、P.gingivalis赤血球凝集ドメインの最小モチーフが判明し、本菌の付着抑制のための予防・治療法の確立のための標的部位が明かとなった。
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