成人性歯周炎の原因菌の一つであるP.gingivalisの、宿主への付着に関与する分子として赤血球凝集因子が知られている。また、P.gingivalisは、増殖に強いhemin、鉄の要求性を示す細菌であり、赤血球凝集因子がその赤血球付着能を介して、鉄獲得系にも寄与すると考えられる。これらのことから赤血球凝集活性をブロックすることによって、P.gingivalisの歯周組織への定着および増殖が阻止され、歯周病の発症・進展の抑制しうるのではないかと考えられる。生体組織への定着に機能する赤血球凝集因子の機能部位を分子レベルで解析し応用することによって、新しい安全性の高い歯周病療法の開発を目指すことを目的とし、以下のように研究を行った。 1.P.gingivalisの赤血球凝集因子に関わる130kDaタンパク質をクローニングし、赤血球凝集活性に関与する機能部位の存在を明らかにした。 2.赤血球凝集活性を抑制する抗体の認識部位を同定し、抗体認識部位のペプチドを合成し、最小限の有効なペプチドの探索と効果を検討した。 3.P.gingivalis赤血球凝集活性を担う分子の機能部位がインフルエンザウィルスの赤血球凝集素の分子突端に位置する配列と相同性が高かったことから、P.gingivalisの付着に細胞表面の糖鎖が関与するかを検討した。 4.130k-HMGDタンパク質認識モノクローナル抗体の抗体可変領域のみから成るリコンビナント抗体を基にして、リプレイスメントテラピーの実現に向け、このリコンビナント抗体の分泌系ホストへの変換を行った。 5.130k-HMGDタンパク質を強く認識するヒト抗体産生細胞をスクリーニングし、ヒト型モノクローナル抗体を作成した。 6.ヒト血清中のインフルエンザ赤血球凝集素に対する抗体とP.gingivalis赤血球凝集因子に対する抗体との交差性について検討を試みる。
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