研究概要 |
本研究の目的は、放射線による細胞の死がミトコンドリアを介しおこる、すなわちMitochondria mediated cell deathがおこることを明らかにし、またその機構について開明することにある。ミトコンドリア障害を示す細胞が、放射線に対し高感受性を示せば、ミトコンドリアの障害が直接あるいは、間接的に細胞の致死を決定することが証明できる。 初年度では、まず、ミトコンドリア内電子伝達系の障害されている細胞について、この細胞が、放射線に対しどのような感受性を示すかを種々のエンドポイントを用い調べた。親細胞株はヒト由来骨肉腫細胞143Bであり、ミトコンドリア内電子伝達系障害細胞は143B細胞から由来した143B-87細胞である。X線に対する生存率をコロニー形成法で調べた結果、143B-87細胞は放射線感受性が5Gyの照射でおよそ100分の1に低下することがわかった。細胞核染色体異常をGAP,DELETION、およびTRANSLOCATIONの3っつのエンドポイントで調べた結果、143B-87細胞では143B細胞に比べ、いずれもおよそ1.5倍の異常を示し、また、DNA2重鎖切断もやはり143B-87細胞で143B細胞に比べ、およそ1.5倍の増加を示した。また、ミトコンドリア内活性酸素量は、照射時に143B-87細胞で大幅な増加を示した。これらは、いずれも、ミトコンドリア内電子伝達系の障害されている細胞が親株に比べ放射線に対し高感受性を示すことを表し、従って、ミトコンドリアの障害が細胞の致死を決定することが証明された。
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