修復象牙質形成過程における象牙芽細胞の分化誘導のメカニズムに関する基礎的研究の一環として、特に細胞分化と細胞外基質との関連性に着目し、その局在について免疫組織化学的検索を進めている。歯の形態発生と細胞分化は上皮-間葉の相互作用により制御されており、この相互作用に基底膜が重要な役割を果たしている。歯の発生過程における細胞分化のメカニズムと基底膜の機能を検索する目的で、歯の発生過程における基底膜構成成分ラミニン-5の遺伝子発現と蛋白の局在をin situハイブリダイゼーション法と免疫蛍光法を用いて観察した。その結果、ラミニン-5は歯胚上皮に発現し、発生時期特異的な発現パターンを示すこと、また細胞分化の過程で基底膜構成成分の変化が起こることが明らかにされた。今後、基底膜細胞外基質に対する細胞受容体の発現、ならびにこのような基底膜構成成分の変化と象牙芽細胞の分化との関連性について検索する必要がある。 一方、う蝕に伴う修復象牙質形成と免疫応答ならびに神経線維との関連性を検索する目的で、う蝕歯髄組織における主要組織適合複合体(MHC)クラスII抗原提示細胞(HLA-DR陽性細胞)とPGP9.5陽性神経線維の分布、局在について免疫組織化学的観察を行った。浅在性う蝕では、HLA-DR陽性細胞は主としてう蝕病巣下の細胞稀薄層に集積し、PGP9.5陽性神経線維はさらにその下方に集積していた。進行したう蝕歯においては、HLA-DR陽性細胞とPGP9.5陽性神経線維は共にう蝕病巣下の象牙芽細胞層直下に密に集積して観察され、様々なサイトカインや神経由来の因子が修復象牙質形成に関連する可能性が示唆される。
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