研究概要 |
本年度の研究ではin vitro実験系における歯髄内容液のCaイオン濃度と象牙質齲蝕様病巣の再石灰化との関連と歯髄細胞におけるCa供給の様相についての研究を行った. 歯髄内容液のCaイオン濃度と象牙質齲蝕様病巣の再石灰化との関連実験の方法としては,牛歯抜去歯牙を用いて0.2M酢酸緩衝液による脱灰により齲蝕様病巣を作製した後,外部からの石灰化を防ぐために窩洞をレジン充填した試料を作成した.歯髄腔内に50,100,150ppmCa溶液を注入して2週間相対湿度100%,37℃で保管後,切片を作製して齲蝕様病巣の再石灰化を顕微X線写真によって観察した.またフッ素濃度による石灰化の違いを見るため歯髄腔内に100ppmCa溶液を入れた試料の窩洞に10%と30%NaF含有レジンを充填して同様に齲蝕様病巣の再石灰化を顕微X線写真によって観察した.その結果歯髄腔内のカルシウム濃度が高いほど石灰化が優れている像が観察され,フッ素濃度に関してもフッ素濃度が高いほど石灰化には有利である像が観察された. また歯髄細胞におけるCa供給の様相を,石灰化に関与する象牙芽細胞におけるカルシウム結合蛋白の発現により検討した.方法としてはラットの第一大臼歯に窩洞を形成後,数日後に屠殺し,試料を作成した.そして,窩洞形成による刺激によって形成される歯髄側の二次象牙質のカルシウムの添加に関与する象牙芽細胞でのカルシウム結合蛋白の発現を免疫染色によって観察した.抗体としてはcalbindinを用いた.その結果,calbindinの発現は見られず二次象牙質形成時の象牙芽細胞によるカルシウムの添加にはcalbindinはさほど関与していなかった.現在,他のカルシウム結合蛋白であるosteocalcin抗体を用いてosteocalcinの発現に関する研究を継続しており,今後他の抗体についても検討を行う予定である.
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