研究概要 |
生体内Caの象牙質再石化への影響を調べるために,まずin vitroで実験を行った.その結果,歯髄液中のカルシウム濃度の増加によって脱灰象牙質の再石灰化も向上し,さらにそこでフッ素が供給されれば再石灰化がさらに向上することが示された. 次にin vivoでの実験を行った.実験としては修復象牙質形成時の歯髄側からのカルシウムの供給についてカルシウム結合蛋白の発現を免疫組織学的に検討を行うことにした.その結果,カルシウム結合蛋白であるオステオネクチンは修復象牙質形成時に象牙芽細胞で発現が向上していることが明らかになった.また,カルシウム結合蛋白のCalbindin D-28kの発現についても検討を行った.そして,Calbindin D-28kの発現が修復象牙質を形成している部位での象牙芽細胞で高くなっていることが明らかになった.これらの知見は,修復象牙質形成時に象牙芽細胞内でカルシウムの蓄積と輸送が活発になっている証拠であり,修復象牙質形成にこの蛋白質が関与している可能性を示し,生体内からのCaの供給が象牙質の石灰化に関与していることを強く示唆するものである.このように,我々はin vitroとin vivoで歯髄側からのカルシウムの供給が象牙質の石灰化に関係していることを明らかにした.このことは齲蝕などによって脱灰された象牙質も歯髄側からのカルシウムの供給によって再石灰化する可能性があることを示唆している.
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